納骨に親族を招かない?家族のみで行う納骨を選択する理由や手続きを解説
納骨を家族のみでおこなう場合、決まりごとや注意することはあるのでしょうか。それとも、何らかの決まりにより、親戚の立ち会いが必要なのでしょうか。
いざ、家族のみで納骨しようとした際、自分が考えていることとは異なるケースと比較してしまい、さまざまな疑問が湧きあがってきますよね。
結論から言えば、家族のみで納骨を行うことは可能です。
ここでは、家族のみで行う納骨を選択する理由や、手続きについて簡単に解説していきます。
納骨とは
納骨は、 骨壷に入れた遺骨をお墓などに埋葬すること をいいます。
納骨のやり方は、法律で決められているわけではないため、遺骨を納める場所、宗教、地方などによって風習に違いがあります。
お墓に納骨する場合は、カロートと呼ばれる収容スペースに納めます。
カロートは、コンクリートや石材で作られています。カロート内部が棚になっている場合もあり、骨壷ごと納めて納骨とします。
一方、関西ではカロートの底が土のままになっているところが多くあります。その理由は、納骨の風習にあります。
関西では、遺骨を骨壷から取り出して、収骨袋と呼ばれる木綿の袋に入れたり、和紙や自然素材の布で包んだりするところが少なくありません。遺骨を自然に還すことが意識された風習です。
なお、合葬墓や納骨堂に納めたり、樹木葬を行ったりする場合でも、遺骨を納める行為のため「納骨」と呼ばれます。
納骨はいつするのか
火葬後の納骨を「いつまでにおこなうべき」か、期限は定められているのでしょうか。
実は、 法律には納骨時期についての規定がありません 。
つまり、例えば自宅で適切に保管できるのであれば、納骨していなくても問題はありません。
一般的に、納骨に適切なタイミングは、以下の4つの節目といわれています。
- 四十九日法要
- 百箇日(ひゃっかにち)法要
- 一周忌
- 三周忌
先祖代々のお墓がある場合には、火葬を終えた当日や四十九日法要のときにおこなうことが多いでしょう。
これからお墓を建てる必要がある場合には、遺骨をしばらく自宅やお寺で安置した後、百箇日や一周忌を目処に納骨をします。
ただし、故人との別れがつらく、なかなか納骨まで踏み切れないケースもあります。そのようなときは、納骨を無理におこなう必要はありません。
納骨の時期には制限がないため、気持ちの整理がついたタイミングで納骨をおこなうことができます。遺族のペースでタイミングを決めるのが大事です。
納骨が小規模になっている背景
以前は、四十九日や一周忌などの法要におおくの親戚や関係者を招き、法要後に納骨法要を執りおこなうこともありました。
しかし、核家族世帯が増え、親類縁者と離れて暮らす生活が一般的になった現代では、法要や納骨といった行事が 「遠出をともなう一大イベント」 になっています。
そのため、親族間でのスケジュール調整がむずかしくなり、結果として、親戚があつまる「先祖代々墓への納骨」から、お墓を新調してでも「家族のみのちいさな規模の納骨」を選択するケースが増加しています。
さらに、コロナ禍による生活様式の変化が追い打ちをかけ、人の生き死にがともなう場面ですら縁故者のあつまりが減少しています。
このような時代の流れのなか、家族のみで小規模の納骨をおこなうことが親族に対する気づかいと考え、選択せざるを得なかったケースもあるでしょう。
ただし、参列する心づもりをしていた親族に対する気くばりは必須です。詳細は、後でみていきましょう。
納骨の参列者を家族のみと限定することにより、ほかの参列者に対するスケジュール調整や、会食、返礼品の準備などをする必要がなくなります。
一方で、納骨に必要な手続きは、家族が確実におこなわなければなりません。
納骨に必要な手続き
では、実際に納骨するにあたって、どのような手続きが必要なのでしょうか。簡単そうに思われますが、遺骨をお墓に持っていくだけでは、納骨できません。
納骨には、 「埋葬許可証」「墓地使用許可証(もしくは受入許可証)」といった書類が必要となり、そのために役所や墓地の管理者に届け出をおこなうほか、石材店にも連絡する必要があります 。
以下で詳しくみていきましょう。
埋葬許可証の取得
納骨をおこなう際は、 「埋葬許可証」(または「埋火葬証明書」)が必要 です。
死亡届を提出する際、役所で「火葬許可証」を発行してもらいます。「火葬許可証」に火葬場で「火葬済」の押印をしてもらったものを「埋葬許可証」とよびます。
自治体によっては「埋葬証明書」のことを「火葬許可証」とよぶなど、書類の名称や手続きの流れが違うこともあります。「埋葬許可証」と「火葬許可証」の2つがあるなど、火葬と納骨で書類がことなる場合もあるので、役所や葬儀の担当者などに聞いて、よく確認しておきましょう。
万が一、許可証なしに納骨をおこなってしまった場合、「墓地、埋葬等に関する法律」の罰則規定に加えて、刑法第190条の「死体破壊・遺棄罪」の罪に問われる可能性があります。
事件性がある行為と区別するための証明書なので、取得したら納骨まで大切に保管します。
なお、死亡した日から5年以上経って納骨をおこなう場合は、火葬をおこなった火葬場で許可証を再発行してもらう必要があります。
お墓や納骨堂の利用申請
上記の書類の他に、 遺骨を納める霊園の管理者や寺院によっては「墓地使用許可証(もしくは受入許可証)」を発行してくれる場合があります 。
墓地使用許可証は、墓地の所有者を証明するために必要な書類です。
とくに民間霊園など書類のやりとりを厳格に行っているところなどは、許可証を忘れたり、紛失したりすると納骨をおこなうことができない可能性もあるため、しっかりと管理しておくことが大切です。
元のお墓を改葬し、樹木葬や納骨堂への納骨をおこなう場合は、墓地や霊園の管理者に「受入証明書」を発行してもらう必要があります。この受入許可証は改葬申請に必要です。
法要の依頼
お墓がある場合、納骨は四十九日法要の日におこなうのが一般的です。お墓の建立が間に合わない場合は、この限りではありません。
納骨当日は、菩提寺の僧侶にお墓まで出向いてもらうことになります。土日祝日に法要をおこないたい場合は、他の法要と重なる可能性が高いため、 はやめに僧侶に相談して、日程を決めましょう 。
新しくお墓を建てた場合には、納骨法要の前に「開眼法要(かいげんほうよう)」を行います。
開眼供養は、ほかに「建碑式(けんぴしき)」「入魂式」とも呼ばれるもので、お墓を供養の対象とするために、墓石に先祖の魂を入れる法要です。
ほとんどの場合、同日に開眼法要の流れで納骨法要をおこないます。
石材店へ連絡
納骨するにあたって、お墓の蓋の開け閉めを自分でおこなうことは、よほど古いお墓でなければ可能です。しかし、素人がおこなうと、お墓の蓋を落として破損させる場合や、怪我をするおそれがあります。お墓によっては、構造や蓋の仕組みがわからないことも少なくありません。
そのため、 石材店に蓋の開け閉めを依頼した方が安心 です。
また、納骨よりも前に墓石に戒名を彫ってもらいたい場合は、合わせて依頼するのがよいでしょう。
家族のみで納骨する際の注意点
家族のみで納骨する際、注意すべき点があります。
「小規模でおこなうから」という理由で、親戚に知らせずにおこなうことは、当然、避けるべき です。
家族だけの行事となったとしても、納骨は葬送儀礼の一部であり、僧侶や石材店など立場上、かかわる人もいます。したがって、服装などのマナーに留意し、最低限の節度をもって故人の納骨にのぞみましょう。
参列者の選択に配慮する
納骨の際に、誰を呼べばよいか、ということに決まりはありません。
しかし、家族のみで納骨することを知らせておかないと、気を悪くする親族もいるかもしれません。
納骨をすませた後で「納骨に呼ばれなかった」といわれて関係性がこじれないよう、 親族や近しい関係者には、「家族のみで納骨をおこないます」と、事前に一言伝えておくべきでしょう 。
最近では、事前に親族や関係者へ一言伝えておき、納骨後に事後報告としてハガキを送ることが増えています。
香典を用意する
家族のみで納骨式を執りおこなう場合も、 香典は用意するのがマナー です。ただし、未成年の場合は、この限りではありません。
香典には「遺族の金銭的な負担を手助けする」という意味のほか、故人への弔意を示すという意味もあります。
家族が支えあっていくことで、故人も喜ぶはずです。
服装に気をつける
納骨法要での服装は、 一般的には礼服です。ただし家族のみの納骨の場合は、平服でも構いません 。
四十九日法要と同時に納骨を行う場合や、親族を呼ぶ場合には、礼服を着用したほうがいいでしょう。
家族のみの納骨式で、形式ばらずに行いたいと考える場合は、平服でも構いません。平服といっても普段着ではなく、男性であれば黒系のスーツやネクタイ、女性であれば黒系のワンピースに黒のストッキングなどが適切です。
事前に家族で話しあって、服装の格式を合わせた方がよいでしょう。墓地でおこなう儀式なので、カジュアルな服装だけは避けてください。
まとめ
納骨を家族のみで行うための手続きや注意点について解説してきました。
お互いをよく知る家族だけが参加する行事ということで、思いきり格式張る必要がないかわりに、各方面への気配りが大切だということがわかりましたね。
昨今の事情や、新しい様式をふまえた上で、「家族だけの納骨」について、家族や親族、関係者がお互いに了承できるよう、コミュニケーションを図りましょう。